街の法律家


医療法人の機関①


医療法人を設立するにあたり、必置の機関として、社員と社員総会、理事と理事長及び理事会、監事を置かなければなりません※₁。
医療法人を運営する上で非常に重要なこれらの機関について詳解させていただきます。

※₁:医療法46条の2及び5、7

社員

医療法に定める医療法人の社員とは、社員総会において1人1個の議決権を有する※₂、社団医療法人の構成員のことです。

社員と聞くと、株式会社等の営利法人の従業員をイメージしがちですが、全く別の概念です。
そして、社団たる医療法人において経営権を掌握するために必要なことは、総社員の過半数を確保することです。
法人の経営を安定させるには役員、つまり理事長・理事であることが重要と思われるかもしれません。
確かに、業務執行の意思決定は理事会の決議事項です。
しかし、理事の選任・解任は社員総会で決議されます※₃。
解任されれば業務執行に携わることはできなくなります。
社員たる地位が重要なのはこうした理由からです。

都道府県ウェブサイト掲載の名簿テンプレート

上記のように、社員の議決権は1人1個と決まっていますので、出資持分のある医療法人(平成19年4月1日以前に設立された、いわゆる経過措置型医療法人社団)においても、社員の議決権は、出資持分の大小とは結合しません。
株式会社のような資本多数決原理が採られておりませんので、持分が大きくても(つまり金額が大きくても)、社員としての議決権は1個ですし、出資持分を有しない社員も存在し得ます。

従って、医療法人を運営する上では、「誰が社員なのか」は非常に重要な事項です。
そして、社団たる医療法人は、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければなりません※₄。
また、社員によって構成される社員総会は、少なくとも毎年1回※₅、定時に開催することとされ、理事長が必要と認めた場合又は総社員の1/5以上の社員からの請求があった場合にも開催することができます※₆。

今回は社員の重要性について詳解させていただきました。
医療法人を設立・運営する上で構成メンバーの選出は非常に重要な要素となります。
それぞれの機関の役割を踏まえて決定することが、後の運営を左右致しますので、医療法に精通した専門家にご相談されることをお勧め致します。

※₂:同法46条の3の3第1項
※₃:同法46条の5第2項、5の2第1項
※₄:同法46の3の2第1項
※₅:ただし、医療法人社団定款例では毎年2回と記載され、現実には2回以上の開催日時を定めるのが通例
※₆:監事による招集の規程もあり


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