街の法律家


医療法人の基金制度①


医療法人は業務に必要な財産を有しなければならないこととされています※₁※₂。

業務に必要な財産を有することが求められる一方で、現在設立できる医療法人社団は、『出資持分の定めのない医療法人社団(以下「持分なし医療法人」と記載します)』のみとなっています。
持分なし医療法人では、設立時に資金を出資しても、払戻請求等で払込済出資額に応じた分配は受けられません(医療法人は剰余金の配当を禁止されています※₃)。

平成19年4月1日以降、設立可能な医療法人社団は、『持分なし医療法人』のみとなりました。持分なし医療法人とは、定款中に出資持分に関する定めを設けていない法人を指します。出資額に応じた医療法人の”所有権”や払戻請求権という概念もなくなります。

持分なし医療法人を設立するに当たり、活動原資の調達手段として基金制度を採用することが認められており、この制度を採っている医療法人を基金拠出型医療法人と呼んでいます※₄。
持分なし医療法人のおよそ8割がこの制度を利用しています※₅。

基金とは、法人の設立等に当たり、拠出された金銭その他の財産(現物拠出財産等)を指します。
基金の拠出者の募集に当たっては、拠出者の権利に関する規定及び基金の返還手続について、定款に定める必要があります※₆。
拠出を受けた法人は、定款の定める所により、返還義務を負います。
拠出した基金の返還に係る債権には、利息や利息に類するものを附すことはできません※₇。

基金の返還には以下の条件があり、定時社員総会の決議によって行われることとされています※₈。

  • 医療法人に基金として拠出された金額を超える純資産があること
  • 返還できる金額は基金の総額を超過した額を限度とすること

また、基金を返還する場合、返還する基金と同額を代替基金として貸借対照表上の純資産の部に計上しなければなりません。

基金の返還は、法令に詳細な規定がありますので、別稿にて具体例を示して詳解させていただきます。

Reference
※₁:医療法41条
※₂:医療法施行規則第30条の34
※₃:医療法第54条
※₄:医療法附則(移行計画の認定)第10条の3第2項1号ハ
※₅:厚生労働省『種類別医療法人数の年次推移』
※₆:医療法施行規則第30条の37
※₇:医療法施行規則第30条の37第2項
※₈:医療法施行規則第30条の38


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