遺言執行者の役割
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者です※₁。
遺言執行者がある場合には、相続人であっても相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることはできません※₂。
また、遺言執行者が、その権限内において遺言執行者としてした行為は、相続人に対して直接その効力を生じます※₃。

遺言者が亡くなった後、相続人となる方々は様々な手続を行うことになります。それらの手続には期限があるものもあります。故人への想いを整理しながら、慣れない手続も行っていくことはとても大変なことです。その状況において、遺言を実現させる権利義務を有するのが遺言執行者です。
遺言執行者を指定することで、遺言執行者が単独(複数人指定されていればその権限内)で相続手続を進めることができるようになります。
遺言執行者の指定は、遺言者が遺言でします※₄。また、遺言執行者の指定が無い場合でも、相続人その他の利害関係人の請求により、家庭裁判所が選任することもできます※₅。
遺言執行者の選任が必要なケース
遺言執行者の指定は任意ですが、下記のケースでは遺言執行者の選任が必要となります。
- 遺言による認知
- 相続人の廃除
遺言執行者を選ぶポイント
遺言執行者に就職できる者に特別な資格は必要ありません。
従って、相続人の中から選任することもできますし、行政書士をはじめとする士業者が選任されることもあります。また、信託銀行等の金融機関もサポートサービスを行っています。
❖未成年及び破産者は遺言執行者に就職できません※₆。
遺言執行者は、遺言者亡き後、遺言者の遺志を実現する者です。遺言執行者を指定する場合は、
- 何を頼みたいのか
- なぜそのように考えているのか
- 懸念していることの有無
等委ねたい事項・事情を、指定する方に遺言書作成の過程でお伝えし、自身の想いを誠実に受け止めてくださる方にお願いすることをお勧め致します。
遺言執行者の指定は、相続手続において相続人の方々への負担を軽減し、手続を円滑に進める上で、ひとつの選択肢となります。
一方で、例えば相続人の中から1人を指定すると、他の相続人との関係において、不公平感からトラブルになることもあります。
遺言の内容にもよりますが、トラブルになることが懸念される場合には、相続人以外の第三者を遺言執行者に選任することで、相続人間のトラブルを予防し、円滑な遺言の実現に資することができるケースもあります。
Reference
※₁:民法第1012条第1項
※₂:民法第1013条第1項
※₃:民法第1015条
※₄:民法第1006条第1項
※₅:民法第1010条
※₆:民法第1009条
