①に続き、医療法人社団の基金制度について、今回は”基金の返還”をテーマとして詳解させていただきます。
返還の手続
前回のブログでもご紹介させていただいた通り、基金の返還は定時社員総会の決議によって行われることとされています※₁。
定時社員総会は、定款の定めるところにより開催されます。
東京都のモデル定款では、『定時社員総会を、毎年2回、〇月及び〇月に開催する』と記載されています。個別に開催回数を変更していればそれに準ずることとなりますが、東京都においては年2回開催とされている定款が多いようです。

注意すべきポイントは、『定時』社員総会で決議しなければならないということです。定款に定められた開催月以外の社員総会は『臨時』社員総会となりますので、基金の返還に関する決議はできません。
基金返還の要件
基金の返還を行うには、下記の条件を満たす必要があります。
- 定時社員総会で返還の決議が行われていること
- 基金の返還は、返還決議後の次の会計年度に関する社員総会の前日までとすること※₂
- 当該医療法人に基金拠出額を超える純資産があること※₃
- 返還される基金の額は、貸借対照表の純資産が基金総額を超過した額を限度とすること
- 返還する基金に相当する金額を代替基金として貸借対照表に計上すること※₄
- 基金に利息や利息に類するものを附すことはできないこと※₅
❖代替基金は、当該医療法人存続期間中を通じて取り崩すことはできません。
事例紹介
『医療法人A』として、基金に関する事項は下記の通りとします。
- 会計年度は7月1日に始まり6月30日に終わる
- 定時総会は年2回、6月1日・8月1日に開催
- 会計年度の決算は8月1日の定時社員総会で決議する
- 純資産額¥40,000,000円
- 基金¥20,000,000円 ※基金の返還履歴なし
医療法人Aが、2025年8月の定時社員総会で基金全額の返還を決議した場合、
❶定時社員総会の決議
❸基金拠出額を超える純資産がある
❹返還する基金(2000万円)は純資産が基金の総額を超過した限度内
についてクリアしていることになります。
続いて、
❷返還の期限は、2026年7月31日となります
基金の返還に関する事項は、医療法施行規則に定められておりますので、上記の6要件を踏まえて返還を行うようご留意ください。
Reference
※₁:医療法施行規則第30条の38
※₂:医療法施行規則第30条の38第2項
※₃:医療法施行規則第30条の38第2項2号
※₄:医療法施行規則第30条の38第3項
※₅:医療法施行規則第30条の37第2項